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東京高等裁判所 平成9年(行ケ)8号 判決 1999年6月08日

東京都品川区二葉1丁目3番25号

原告

日本電球協同組合

代表者代表理事

堀内喜八郎

訴訟代理人弁理士

尾股行雄

東京都台東区台東3丁目37番8号

被告

コロナ産業株式会社

代表者代表取締役

高﨑博

訴訟代理人弁理士

志賀正武

高橋詔男

渡辺隆

成瀬重雄

主文

特許庁が平成8年審判第8905号事件について平成8年12月3日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

被告は、考案の名称を「装飾電球用包装枠」とする実用新案登録第2013753号の実用新案(昭和63年7月11日実用新案登録出願、平成5年6月30日出願公告、平成6年4月6日設定登録。以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。原告は、平成8年6月5日、本件考案の実用新案登録の無効の審判を請求し、平成8年審判第8905号事件として審理された結果、平成8年12月3日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受け、平成8年12月16日にその謄本の送達を受けた。

2  本件考案の実用新案登録請求の範囲

「コードに多数の豆電球が取付けられた装飾電球用包装枠であって、

コード収納用の凹溝と、

該凹溝の側壁上縁にほぼ水平方向に連設された電球支持台と、

該電球支持台の基部上側に突設されたフックと、

前記電球支持台の先端部に連設され、箱の側壁に当接する補助板とを有し、

剛性のある合成樹脂で一体的に形成された、装飾電球用包装枠。」(別紙図面(1)参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本件考案の実用新案登録請求の範囲は、前項記載のとおりである。

(2)  引用例

審決の甲第2号証(本訴の甲第4号証。実公昭61-28783号公報。以下「引用例(1)」という。)には、装飾電球セットを収納する包装箱のプラスチック製中仕切りが記載されており、上記中仕切りは、2列の凸部120、130に多数の凹部を設けて2列の凸部による電球保持部とし、二つの電球保持部を仕切間隔保持都161~163によって連設し、電球保持都の外側面下端に横方向に基板係止爪141を突設した構造を有するものである。上記中仕切りは、上記包装箱に装着して、基板係止爪141を基板の孔に嵌合させて取り付けられるものであり、電球保持部の2列の凸部の凹部に個々の電球を挟んで保持させ、リード線を左右の電球保持都の間の空間に収容するものである(以下、上記引用例(1)記載の技術を「引用技術(1)」という。)。

(3)  対比

本件考案と引用技術(1)は、次の点で相違し、その余の点で一致している。

(イ) 引用技術(1)は、そのコード収納部が電球支持台と平坦であって、これらの底面が基板に接して支持されるのに対して、本件考案は、その電球支持台がコード収納部よりも高い段部となっていて、コード収納部の底面だけが基板に接して支持される点(相違点<1>)

(ロ) 引用技術(1)は、基板係止爪141を有し、当該爪141を基板の孔に嵌合させて固定されるものであるのに対して、本件考案は、電球支持台の先端部に連設された補助板を有し、これを箱の内側面に当接させて固定されるものである点(相違点<2>)

(4)  相違点の判断

(イ) 相違点<1>について

引用技術(1)は、コード収納部の深さが電球支持部の深さと同じであるのに対して、本件考案は、コード収容部の深さを深くでき、これによって無理なくコードを収容できるということができるという作用効果を有するものということができる。ところで、包装箱のプラスチック製中仕切り一般において、各収容部の底の高さを収容されるものの高さに合わせて適宜選択することは、従来からの周知事項である(実開昭57-37331号公報(本訴の甲第5号証)参照)。そうすると、本件考案の上記作用効果は、格別のものとはいえない。

(ロ) 相違点<2>について

引用技術(1)は、その中仕切りの形状構造をどのように変更しようとも、これを基板に固定する手段を設けなければならないものであるのに対して、本件考案は、電球支持台から外側に延長して連設した補助板(基板上面には当接しないもの)を包装箱の内面に当接させることによって、中仕切りを水平方向に固定するとともに、コード収納部と段差をもって上方に位置し、基板上面から離間している電球支持台の上下方向の安定性をも向上させ得るものである。

ところで、審決の甲第1号証の1及び2(本訴の甲第3号証の1及び2)には、上記と同様の中仕切りの電球支持台から外側に延長して外側壁6’を設ける技術が記載されている(以下「引用技術(2)」という。別紙図面(2)参照)。しかし、引用技術(2)の側壁6’は、コード収納部と同レベルの電球支持台の外側に延長した水平部の先端に一体に連設した側壁であって、いわゆる当て板として機能するものではなく、また、引用技術(2)の電球支持台の底は、包装箱の基板に直接に接して支持されているものであって、そもそも上下方向の安定性を欠くものではないから、引用技術(2)の側壁6’は、包装箱の内面に当接して電球保持部の上下方向への安定性を向上させる機能を奏するとはいえず、したがって、引用技術(2)には、本件考案の相違点<2>に係る技術事項、すなわち、電球支持台から外側に延長して連設した補助板(基板上面には当接しないもの)を包装箱の内面に当接させることによって、中仕切りを水平方向に固定するとともに、コード収納部と段差をもって上方に位置し、基板上面から離間している電球支持台の上下方向の安定性をも向上させ得るというものが記載されているとはいえない。

そうすると、相違点<2>に関し、本件考案は、当業者が引用技術(1)及び(2)に基づいて本件考案の実用新案登録出願前にきわめて容易に考案することができたものであるということはできず、また、職権をもって調査しても、同様に当業者がきわめて容易に案出し得たものであるということもできない。

(5)  結論

よって、本件実用新案登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してされたものとはいえない。

4  本件審決を取り消すべき事由

審決の理由の要点(1)ないし(3)及び(4)(イ)は認め、(4)(ロ)及び(5)は争う。

本件審決は、相違点<2>の認定判断を誤った結果、本件考案は、当業者が引用技術(1)及び(2)に基づいてきわめて容易に考案をすることができたものとはいえないとの誤った結論を導いたものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)  審決は、本件考案は、電球支持台から外側に延長して連設した補助板(基板上面には当接しないもの)を包装箱の内面に当接させることによって、中仕切りを水平方向に固定するとともに、コード収納部と段差をもって上方に位置し、基板上面から離間している電球支持台の上下方向の安定性をも向上させ得るものである旨認定している。

(イ) しかしながら、本件明細書は、電球支持台の先端に連設した補助板を包装箱の側壁(又は側壁内側)に当接させるとしているだけで、審決がいうように包装箱の内面に当接させるとはいっていない。審決の上記認定は、包装箱の側壁内面以外に上下の内面をも包含させ、明細書に記載のない事項までも取り込んでいるものである。

また、本件明細書には、電球支持台の先端に連設した補助板を包装箱の側壁に当接させることによって水平方向に動かないように固定することと、剛性のある合成樹脂で形成したことによって電球支持台の先端部を撓みにくくしていることが記載されているが、電球支持台の先端に連設した補助板によって、水平方向の固定とともに、電球支持台の上下方向の安定性をも向上させるとは記載されていない。

更に、本件明細書には、補助板及び剛性のある合成樹脂で形成したことについての効果が記載されていない。すなわち、補助板を包装箱の側壁に当接させることによって水平方向に動かないように固定することや、剛性のある合成樹脂で形成したことによって電球支持台の先端部を撓みにくくすることは、本件明細書の記載の仕方からすると、出願人自身が、ありふれた自明の効果でしかないと考えたからであると推測される。けだし、補助板及び剛性のある合成樹脂で形成したことは、本件考案の必須要件であるから、このことによる効果については、考案の詳細な説明中の効果の項に記載されて然るべきであるし、いわんや審決認定のような相乗効果が得られるというのであれば、尚更のことと思えるのに、上記効果について何の記載もないからである。

以上を総合すると、補助板によって電球支持台の上下方向の安定性をも向上させるとする審決の上記認定は、誤っているものである。

(ロ) 被告は、本件考案の補助板は、箱の内面に当接して包装用枠を安定するように構成されたものと認定して何ら不都合はない旨主張するが、本件明細書には、補助板について、「箱の側壁に当接する」(3欄15行)とか「箱6の側壁内側」(3欄31行)と記載されているのであって、補助板が箱の内壁に当接するように構成されたものとはいえない。

また、被告は、本件明細書には、電球支持台の上下方向の安定性をも向上させることが実質上記載されている旨主張するが、被告の指摘する本件明細書3欄30行ないし33行の記載では、補助板5の上端と下端がどこまで延びているか不明であり、4欄6行ないし16行の記載にしても、補助板5の上端がどこまで延びているか不明であるから、電球支持台の上下方向の安定性をも向上させ得るか否かは不明である。また、本件明細書の「特にこの実施例では補助板5を電球支持台3の上にも延ばしたので、」(4欄12行ないし14行)の記載は、補助板5を電球支持台3の上に延ばさないこともあることを示唆しているところ、その場合には、技術常識に照らして、電球支持台の上下方向の安定性を向上させるということはできない。更に、本件考案に係る実用新案登録出願の願書添付の図面(以下「本件図面」という。)の第1図は、補助板と箱との間に一目瞭然たる水平方向と上下方向の隙間があるから、外部からの振動によって水平方向にも上下方向にもガタつくことが予想されるものであって、電球支持台の上下方向の安定性を向上させることが記載されているとはいえない。更に、被告は、考案の詳細な説明中の(考案により解決しようとする問題点)の項、(考案の作用)の項の記載等からも、補助板を有すること及び剛性のある合成樹脂で一体的に形成したことによる相乗的な効果が実質上記載されているということができるなどと主張するが、考案の構成に伴う効果は、考案の効果の項の記載によるべきであって、それを、考案の効果の項に記載がないのに、例えば、実施例の項に記載があれば、それをもって本件考案の効果が実質上記載されているとするのは、本件事案の場合に到底許されないことである。

(2)  審決は、引用技術(2)の側壁6’は、コード収納部と同レベルの電球支持台の外側に延長した水平部の先端に一体に連設した側壁であって、いわゆる当て板として機能するものではない旨認定している。

(イ) しかしながら、包装箱内に収納具を収納して使用する場合、包装箱内の収納具をガタつかせないように収納具の側面を対向する包装箱側壁に当接させるといった程度のことは、例えば、実開昭56-18376号公報(甲第6号証の1及び2)からも分かるとおり、引用技術(2)に係る考案の出願当時における技術常識といえることであるから、この技術常識を基礎として、包装箱内に収納された収納具の側壁6’は、包装箱側面に当接することによって、当て板として機能しているというべきである。

(ロ) 被告は、甲第6号証の1及び2の技術は、旋風機のファン及びガードの梱包装置に関するものであり、装飾電球用の包装枠とは技術分野が全く異なる旨主張するが、取扱物品が扇風機のファン・ガードか装飾電球かで異なっても、甲第6号証の1及び2の技術と本件考案は、いずれも、包装箱の底面から離間している支持台をガタつかないように安定保持することを課題とし、その解決手段として支持台先端部に連設した板状体を箱の側壁に当接させる構成を採用しているのであって、包装技術の分野のものとして共通している。

(3)  そうすると、審決は、相違点<2>の認定判断を誤り、その結果、進歩性について誤った判断をするに至ったものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

第3  請求の原因に対する認否及び反論

1  請求の原因1ないし3は認め、4は争う。審決の認定判断は、正当であって、取り消されるべき理由はない。

2  反論

(1)(イ)  原告は、本件明細書は、電球支持台の先端に連設した補助板を包装箱の側壁(又は側壁内側)に当接させるとしているだけで、審決がいうように包装箱の内面に当接させるとはいっていない旨主張する。

しかしながら、本件明細書には、「補助板を連設したので、包装用枠は箱に安定した状態で装着される。」

(3欄15行ないし17行)、「該補助板5は箱6の側壁内面に当接するように、垂直となっていると共に、前記電球支持台3の上下方向に延びている。」(3欄30行ないし33行)、「また、剛性のある合成樹脂によって構成してあるのと共に、電球支持台3の先端に補助板5を連設してあるので、電球支持台3が箱に当接していなくとも電球支持台3の先端部が撓んで電球支持台3と箱の蓋との間に広い空間が生じることもなく、電球が暴れるおそれもない。更に、包装用枠は箱に安定した状態で装着されることとなる。特にこの実施例では補助板5を電球支持台3の上にも延ばしたので箱の蓋の箱内への落ち込みを防止することができ、運搬中等における箱ないしは電球の破損を未然に防止することができる。」

(4欄6行ないし16行)との記載があり、また、本件図面第1図、第2図によれば、本件考案の包装用枠にはコード収納用凹溝1があって、該凹溝の側壁2の上縁にほぼ水平方向に電球支持台3が連設されており、電球支持台は、凹溝の側壁の高さ分だけ箱の底板面から浮いているのであって、もし補助板5がなければ、安定性を欠くことになる。

以上によれば、本件考案の補助板は、箱の内面に当接して包装用枠を安定するように構成されたものと認定して何ら不都合はない。

(ロ) 原告は、本件明細書には、電球支持台の先端に連設した補助板によって、水平方向の固定ととともに、電球支持台の上下方向の安定性をも向上させるとは記載されていない旨主張する。

しかしながら、本件考案の包装枠における電球支持台は、凹溝の側壁上縁からほぼ水平に連設されているものであり、この電球支持台の底面は、箱の底面から離れているので上下方向の安定性を欠いている。そこで、本件考案では、電球支持台の先端部に補助板が連設されているのであり、これによって、包装枠が箱に安定した状態で装着されるのである。このように、本件考案の包装枠が電球支持台の上下方向の安定性を図ったものであることは、本件明細書の「すなわち、素材が剛性のないボール紙であるから、コード収納部13の底15と豆電球支持部16とは共に同一の高さとして箱17の底に当接させるようにしなければ、この包装用枠を箱17に安定よく装着することができない。」(2欄18行ないし22行)との記載からも明らかである。更に、本件考案の実施例においても、本件明細書の前記3欄30行ないし33行、4欄6行ないし16行、本件図面第1図、第2図において、電球支持台が凹溝の側壁上縁から水平方向に連設され、その先端に補助板を設けることによって安定を図っていることが記載されているものである。

したがって、本件明細書には、電球支持台の上下方向の安定性をも向上させることが実質上記載されているということができる。

(ハ)  原告は、本件明細書には、補助板及び剛性のある合成樹脂で形成したことについての効果が記載されていない旨主張する。

しかしながら、本件考案の包装枠において補助板を有すること及び剛性のある合成樹脂で一体的に形成したことによる効果は、前記のとおり、本件明細書4欄6行ないし16行に記載されている。この記載は、本件考案の実施例についての説明の中で述べられているものではあるが、本件考案の効果としても十分に理解できるものである。

また、考案の詳細な説明中の(考案により解決しようとする問題点)の項、(考案の作用)の項の記載等からも、補助板を有すること及び剛性のある合成樹脂で一体的に形成したことによる相乗的な効果が実質上記載されているということができる。

更に、一般的に明細書において考案の効果を記載するに際しては、考案の構成要素の各々について、それ独自の効果を記載する必要はなく、考案全体としての効果が記載されていればよいことは、多くの判例や審決によって確立されている。

(2)  原告は、引用技術(2)において、包装箱内に収納された収納具の側壁6’は、包装箱側面に当接することによって、当て板として機能している旨主張する。

しかしながら、引用技術(2)の内部仕切収納具における電球支持部分の底面は、コード収納部分の底面と同一平面にあり、電球支持部分が上下方向に不安定になることはないから、側壁6’を箱の内壁に当接して安定を図る必要性は全くない。このような事情から、その明細書中には、側壁6’が何らかのものに当接することについて説明されていないのである。

なお、原告は、包装箱内に収納具を収納して使用する場合、包装箱内の収納具をガタつかせないように収納具の側面を対向する包装箱側壁に当接させるといった程度のことは、例えば、実開昭56-18376号公報(甲第6号証の1及び2)からも分かるとおり、引用技術(2)に係る考案の出願当時における技術常識といえることであるから、この技術常識を基礎として、包装箱内に収納された収納具の側壁6’は、包装箱側面に当接することによって、当て板として機能しているというべきである旨主張する。

しかしながら、甲第6号証の1及び2の技術は、旋風機のファン及びガードの梱包装置に関するものであり、装飾電球用の包装枠とは技術分野が全く異なる上に、その構成もコード収納用凹溝やその側壁上縁から水平方向に運設された電球支持台に相当するものがないなど共通する点がきわめて少ないものであり、甲第6号証の1及び2の技術が公知であるからといって、引用技術(2)の側壁が当て板として機能するものであるとはいえない。

第4  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

第1  請求の原因1(特許庁における手続の経緯)、同2(本件考案の実用新案登録請求の範囲)、同3(審決の理由の要点)は、当事者間に争いがない。

第2  本件考案の概要

甲第2号証によれば、本件明細書には、次の記載があることが認められる。

1  産業上の利用分野

「この考案は、クリスマスツリー用の装飾電球のように、コードに多数の豆電球が取付けられた装飾電球を包装する為に使用される、装飾電球用包装枠に関するものである。」(1欄15行ないし18行)

2  従来の技術

「この種の装飾電球は、通常ボール紙製の箱に包装して運搬、販売されている。そして、装飾電球を直に箱へ収納すると、コードと豆電球が錯綜し、包装状態が雑然としてしまう。そこで、箱内に包装用枠を装着し、その枠に豆電球を係止させることにより整然とした包装状態を得るようにしている。」(1欄20行ないし26行)

3. 考案により解決しようとする問題点

「ところで、上記従来の包装用枠においては、ボール紙を屈曲して形成してあるので、壁12の高さが低く、コード収納部13の容積が不足し、コードが該部からあふれる場合があった。そして、コードがあふれると収納状態が雑然とするのみならず、箱の蓋が閉めにくくなるという問題点もあった。」(2欄7行ないし13行)

4  問題点を解決するための手段

本件考案は、上記問題点を解決するために、実用新案登録請求の範囲記載の構成を採用したものである。(実用新案登録請求の範囲、3欄1行ないし6行)

5  本件考案の作用

「この考案において、コード収納用凹溝の側壁上縁に電球支持台を連設し、該電球支持台の基部上面にフックを突設してあるので、上記従来の包装用枠と比較して、凹溝の側壁の高さ相当分だけコード収納部の容積が増大する。そして、フックの高さは従来の側壁と同等としておけば電球支持台と箱の蓋との間に広い空間が生じることもない。また、電球支持台の先端に箱の側壁に当接する補助板を連設したので、包装用枠は箱に安定した状態で装着される。したがって、電球の暴れを未然に防止しつつコード収納部の容積を増大することができ、上記従来の問題点は解決される。(3欄8行ないし20行)

6  本件考案の効果

「この考案によれば、コード収納用の凹溝の上緑に電球支持台を連設し、該電球支持台の基部上側フックを突設したので、凹溝部分及び対向フック間の空間が実質的にコード収納部として機能する。すなわち、従来の包装用枠と比較して凹溝の容積分だけコード収納部が増大することとなる。したがって、コードが包装用枠の上方に盛り上がってあふれることがなく、箱の蓋を閉めにくくなるおそれもなく、装飾用電球を整然と、見栄え良く収納することができる。」(4欄24頁ないし33行)

第3  審決を取り消すべき事由について判断する。

1  審決は、本件考案は、電球支持台から外側に延長して連設した補助板(基板上面には当接しないもの)を包装箱の内面に当接させることによって、中仕切りを水平方向に固定するとともに、コード収納部と段差をもって上方に位置し、基板上面から離間している電球支持台の上下方向の安定性をも向上させ得るものである旨認定しているところ、原告は、この認定を争っているので、検討する。

(1)  本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「前記電球支持台の先端部に連設され、箱の側壁に当接する補助板とを有し」と記載されているところ、同記載によれば、本件考案は、箱の側壁に当接する補助板をその必須の構成要素としていることが明らかである。一方、同実用新案登録請求の範囲には、補助板を箱の上部内面や底部内面に当接する構造とすることを本件考案の構成としていることを窺わせるような記載は存在しないのであって、同事実によれば、本件考案は、補助板を箱の上部内面や底部内面に当接する構造とすることを本件考案の構成要素としていないものと認めるのが相当である。

このことは、前記第2の5に認定したとおり、本件明細書に「電球支持台の先端に箱の側壁に当接する補助板を連設したので、包装用枠は箱に安定した状態で装着される。したがって、電球の暴れを未然に防止しつつコード収納部の容積を増大することができ、上記従来の問題点は解決される。」と記載され、また、同明細書の(問題点を解決する為の手段)の項に「コード収納用の凹溝の側壁上縁に、ほぼ水平な電球支持台を連接し、該電球支持台の基部上面にフックを突設すると共に、前記電球支持台の先端に箱の側壁に当接する補助板を連設した構造とし、剛性のある合成樹脂で一体的に形成して装飾電球用包装枠としたものである。」(甲第2号証3欄1行ないし6行)と記載されているに止まることからも裏付けられる。

(2)  被告は、本件考案の補助板は、箱の内面に当接して包装用枠を安定するように構成されたものと認定して何ら不都合はない旨主張し、その根拠として、本件明細書の3欄15行ないし17行、3欄30行ないし33行、4欄6行ないし16行の記載を掲げ、また、本件図面第1図、第2図によれば、本件考案の包装用枠にはコード収納用凹溝1があって、該凹溝の側壁2の上縁にほぼ水平方向に電球支持台3が連設されており、電球支持台は、凹溝の側壁の高さ分だけ箱の底板面から浮いているのであって、もし補助板5がなければ、安定性を欠くことになるなどとしている。

しかしながら、被告が指摘する3欄15行ないし17行の記載の直前には「電球支持台の先端に箱の側壁に当接する」という文言があって、全体としては、「電球支持台の先端に箱の側壁に当接する補助板を連設したので、包装用枠は箱に安定した状態で装着される。」と記載されているのであって、この記載が、被告の上記主張を裏付けるものとなりえないことは明らかである。

また、3欄30行ないし33行、4欄6行ないし16行の記載並びに本件図面第1図、第2図の記載は、いずれも、本件考案の実施例に関するものであるところ、仮に、実施例に、被告の主張するような技術が記載されていたとしても、前記認定のとおり、本件考案は、補助板を箱の上部内面や底部内面に当接する構造とすることを本件考案の構成としていないのであって(当接しないものを排除していない。)、実施例に記載されているに過ぎない技術事項を本件考案の構成の中に取り込んで本件考案の構成要素とすることはできない。

したがって、被告の上記主張は、採用することができない。

(3)  そうすると、本件考案は、補助板を箱の上部内面や底部内面に当接する構造とすることを本件考案の構成要素としておらず、電球支持台の上下方向の安定性の向上は本件考案の構成に基づく作用効果ではないことになるから、本件考案の相違点<2>に係る作用効果に関する審決の認定は、誤っているものである。

2  審決は、引用技術(2)の側壁6’は、コード収納部と同レベルの電球支持台の外側に延長した水平部の先端に一体に連設した側壁であって、いわゆる当て板として機能するものではない旨認定し、原告は、この認定を争っているので、検討する。

(1)  甲第3号証の1及び2によれば、引用技術(2)は、包装箱内に装飾電球及びコードを収納する収納具に関するもので、引用技術(2)の側壁6’は、コード収納部と同レベルの電球支持台の外側に延長した水平部の先端に一体的に連設されていることが認められる。

ところで、原告は、容器ないし箱への収納具の当接に関する技術常識を立証するものとして甲第6号証の1及び2(実開昭56-18376号公報等)、甲第7号証の1及び2(実開昭50-143974号公報等)、甲第8号証の1及び2(実開昭54-80475号公報等)及び甲第9号証(実公昭33-10193号公報)を提出しているところ、甲第6号証の1及び2には、旋風機のファン及びガードの梱包装置に関する技術が、甲第7号証の1及び2には、照明器具梱包装置に関する技術が、甲第8号証の1及び2には、照明器具の包装用保護枠に関する技術が、甲第9号証には、扇風機の包装装置に関する技術がそれぞれ記載されていて、これらには、収納している旋風機のファン及びガード、照明器具あるいは扇風機を、運搬中の衝撃、振動等から保護するために、容器ないし箱の内側に当接する収納枠を用いることが記載されていることが認められる。

上記認定の事実によれば、本件考案の実用新案登録出願日前に、所要の形状を有する物を、運搬中の衝撃、振動等から保護し、安定な状態で容器ないし箱に収容するために、上記容器ないし箱の内面に当接する収納枠を用いることは、収納の対象となる物品のいかんを問わず、技術常識であることが認められる。

そして、上記技術常識を前提とすれば、引用技術(2)の側壁6’は、容器に収容された場合に、容器の側部内面に当接し、安定した状態で、所定の物を収容し、かつ、保持するいわゆる当て板の機能を果たすものと認められる。

(2)  この点について、被告は、甲第6号証の1及び2の技術は、旋風機のファン及びガードの梱包装置に関するものであり、装飾電球用の包装枠とは技術分野が全く異なる上に、その構成もコード収納用凹溝やその側壁上縁から水平方向に運設された電球支持台に相当するものがないなど共通する点がきわめて少ないものであり、甲第6号証の1及び2の技術が公知であるからといって、引用技術(2)の側壁が当て板として機能するものであるとはいえない旨主張するが、上記認定判断のとおり、運搬中の衝撃、振動等から保護し、安定な状態で容器ないし箱に収容するために、上記容器ないし箱の内面に当接する収納枠を用いる技術は、収納の対象となる物品のいかんを問わないのであり、また、収納枠を容器ないし箱の内面に当接するという技術は、収納の対象となる物品の形状に応じた収納枠の具体的構成によって左右されるものではないから、被告の上記主張は、採用することができない。

(3)  そうすると、引用技術(2)の側壁6’は、コード収納部と同レベルの電球支持台の外側に延長した水平部の先端に一体に連設した側壁であって、いわゆる当て板として機能するものではないとした審決の認定は、誤っているものである。

3  以上によれば、本件考案と引用技術(1)とは、相違点<1>及び<2>で相違しているところ、相違点<1>に係る作用効果が格別のものでないことは当事者間に争いがなく、相違点<2>についても、前記認定判断のとおり、引用技術(2)及び技術常識に鑑み、引用技術(1)及び(2)を組み合わせることはきわめて容易であり、しかも、相違点<2>に係る作用効果も格別のものではないと認められる。

そうすると、本件実用新案登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してされたものではないとした審決の判断は違法であって、この違法は審決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

第4  以上認定判断したところによれば、原告の本訴請求は、理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成11年5月25日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 山田知司 裁判官 宍戸充)

別紙図面(1)

<省略>

別紙図面(2)

<省略>

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